患者が知らない補綴(ほてつ)の話
患者が知らない補綴(ほてつ)の話
歯冠と歯根
補綴(ほてつ)とは、失われた歯が欠損(欠けたり失ったり)した部位に被せ物や人工物で歯を補うことを言います。
むし歯などで歯の上の部分がダメになってしまっても、歯根がダメになっていなければ被せ物の治療はおおよそ可能です。神経を取ってしまっても歯根が大丈夫であるかどうかが判断の分かれ道です。
差し歯と呼ばれていた理由
大変おおざっぱな絵で申し訳ないですが、昔から被せ物の歯を「差し歯」と呼ばれるのには理由があります。今の被せ物は左のように上部の人口の歯である被せ物(クラウン)とコアと呼ばれる土台(支台歯)が一体型でした。そのため、歯根の中に差し込むので「差し歯」と呼ばれていたのです。
どうして分割になっていったかというと、一体型だと過剰な力が加わった時に土台も歯根の部分で力が加わってしまうので歯根が破折してしまうことが多かったからです。被せ物とコア(土台)が別になっていることで歯根への吸収が和らぐことで破折を防ぐのです。
自費の被せ物と保険の違い
保険と自費の違いはコアに大きな違いがあります。
自費のコアに使われるものはファイバー(繊維)コアなどの、強くてしなやかな素材で作られています。保険の金属製のものと違いリスクがまったく違います。
上位部分である人口の歯も保険の物と高品質なセラミックやジルコニアで作るものでは色合いや強度、汚れの沈着も使える年数も違います。
歯科における国の保険診療の考え方は『最低限度で噛める範囲の治療』であり、快適に美味しく噛めるという観点からは少し離れています。
大切なのは、噛むという行動が自然に出来ないという事は、全身疾患やアルツハイマーになる可能性を大きく高めます。歯科医師の多くが自由診療を勧めるのは儲けというより患者さまの健康を考えてであることをご理解頂ければ嬉しいです。
ブリッジ、入れ歯は勧めたくない?
ブリッジや部分入れ歯は保険適用で出来る歯を補う治療ですが、残念ながら「治す」訳ではありませんから厳密には治療ではないのかもしれません。
さらに言うと、ブリッジは両隣りの健康な歯を削って真ん中の歯を補う方法です。残念ながら1度削ってしまった歯は必ず悪くなります。保険のブリッジと高価な材質のものの違いは再発リスクの経過年数であると言っても過言ではありません。
部分入れ歯も同じように金具で健康な両隣りの歯に噛む力を負担してもらうわけですから、いずれは悪くなり、入れ歯が大きくなってしまいます。ですので、本当に良い治療をご提案するのであれば、欠損した歯の部分を補う治療法は差し歯かインプラントになるのです。(あくまで他の歯を悪くしないためにという観点からです)
補綴と予防
どんな治療を施したにせよ、大切なのは健康な歯よりもメインテナンスと再発防止のセルフケアが重要になります。
1度治療したむし歯は、まず再発するものです。すぐに再発し、再治療になるより、なるべく再発しないようにするほうが噛む健康の為にもお財布の為にも良いことです。
その為には、定期的な歯の検診と歯科衛生士による歯石除去などの歯のクリーニングと、歯磨き指導による正しい歯磨きといったセルフケアが重要になります。
特に「歯は磨けるよ!」と思っていても磨き方に癖がでるものです。
右利きの方は右上の歯に磨き残しが多かったり、奥歯の裏側など親知らずが生える個所などの磨き残しが多いものです。
定期検診は保険内でも出来ますので、お気軽にご予約下さい。目安は3ヶ月に1度程度が良いでしょう。初めに汚れが多い方は複数回に分けてお掃除させて頂くこともあります。ご了承ください。